1型糖尿病は、主に自己免疫反応により、インスリンを作り出す膵臓のβ細胞が破壊されることで起こる病気です。その結果、インスリンがほとんど作られなくなり、血糖値が慢性的に高くなる状態(高血糖)になります。2型糖尿病と異なり、発症には生活習慣(食事・運動・ストレスなど)は関与せず、予防が難しい病気です。
発症時期は小児から青年期に多く見られますが、年齢を問わず成人になってから発症することもあります。日本人の糖尿病患者さん全体の5%未満とされており、比較的まれなタイプの糖尿病です。遺伝的要因は2型糖尿病に比べて少ないとされています。
主な症状としては、のどが渇く、尿量が増える、急激な体重減少、強い倦怠感などがあり、短期間で進行するのが特徴です。これらの症状が見られた場合には、早めの血糖値の検査や尿検査、自己抗体の検査などが重要です。
診断や治療方針については、日本糖尿病学会のガイドラインに基づいて進められ、インスリン治療が不可欠となります。インスリンは自分の体で作ることができないため、外から注射などで補う必要があり、生涯にわたる自己管理が求められます。
1型糖尿病とは?
1型糖尿病の分類
1型糖尿病は、インスリン分泌が失われていくスピードや経過の違いによって、主に次の3つのタイプに分類されます。それぞれの特徴を理解することは、適切な治療を行う上でとても大切です。
劇症(げきしょう)1型糖尿病
文字通り、非常に急激に進行するタイプで、発症から数日から1週間ほどで、膵臓からのインスリン分泌が急速に消失します。そのため、発症早期からインスリン治療が不可欠です。糖尿病の症状出現から1週間前後以内で糖尿病ケトアシドーシスという生命に関わる緊急の状態に陥る可能性が高まります。多くは自己免疫の関与が不明とされています。
発症前に風邪のような症状(発熱、のどの痛み、咳、腹痛、下痢など)がみられることが多く、診断時の血糖値は非常に高いが、HbA1c値が比較的低値なことも特徴です。
急性発症1型糖尿病
このタイプは、最も一般的な1型糖尿病の形です。数週間から数か月のうちにインスリン分泌が低下し、インスリン依存状態となり、生命維持のためインスリン治療が必要となります。
多くは自己免疫反応が関与しており、GAD抗体やIA-2抗体といった出納関連自己抗体が陽性となることが多いです。症状は比較的急に現れますが、劇症型ほどの急速な進行ではないため、診断と治療のタイミングが重要です。
緩徐進行(かんじょしんこう)1型糖尿病(SPIDDM)
ゆっくりと進行するタイプの1型糖尿病で、はじめは2型糖尿病と診断されることも少なくありません。数か月から数年かけてインスリン分泌が徐々に減少していきます。
このタイプも自己抗体(GAD抗体など)が陽性となることが多く自己免疫によるものと分類されます。初期には食事療法や経口薬(内服薬)で血糖管理されることもありますが、膵臓のβ細胞機能を守るためには、早めにインスリン治療を導入することが勧められています。
なお、スルホニル尿素薬(SU薬)などを長期に使用すると、かえってインスリン分泌の枯渇を早めてしまう可能性があるため、注意が必要です。ご自身のインスリン分泌能力がある程度保たれていれば、インスリン注射の回数や量を調整することも可能です。
1型糖尿病の原因
体の免疫システムが誤って自分自身の膵臓にあるインスリン産生細胞(β細胞)を攻撃・破壊してしまうことで、インスリンの分泌が極端に低下し、高血糖の状態が続くようになります。
原因の約90%はこの自己免疫反応によるもので、残りの約10%はウイルス感染などによって生じる「特発性1型糖尿病」とされています。ただし、なぜこのような免疫の異常が起こるのか、その根本的な原因はまだ明らかになっていません。
1型糖尿病は、食生活や運動習慣といった生活習慣とは直接関係がありません。発症は予防が難しく、どんなに健康的な生活を送っていても発症することがあります。
また、1型糖尿病は一般的に「遺伝する病気」ではありませんが、遺伝的な素因が関与していることもあります。
さらに、1型糖尿病と診断された方の多く(90%以上)で、GAD抗体やIA-2抗体などの自己抗体が血液検査で陽性となります。これらの抗体は、診断時や進行予測の参考として用いられ、ガイドラインにもその測定が推奨されています。
1型糖尿病の症状
1型糖尿病では、インスリンが十分に分泌されないことなどの原因で血糖値が上がる、いわゆる「高血糖の症状」が現れます。これらの症状は、2型糖尿病と共通する部分も多く、次のような変化が見られることがあります。
- のどが渇く
- 尿の回数や量が増える
- 急に体重が減る
- 強い疲労感、だるさを感じる
これらの症状は、血糖が高くなりすぎて体の中の水分が失われることや、エネルギー源として糖をうまく使えなくなることが原因です。とくに、1型糖尿病は進行が早いため、数日から数週間のうちにこれらの症状が一気に現れることがあります。
さらに、インスリンが全く不足した状態が続くと、体が脂肪をエネルギー源として使うようになり、その過程でケトン体という物質が体内にたまります。これが進行すると、糖尿病ケトアシドーシスという命に関わる緊急の状態を引き起こすことがあります。以下のような症状があれば、すぐに医療機関への受診と適切な治療が必要です。
1型糖尿病の診断
1型糖尿病は、高血糖の症状をきっかけに発見されることが多い病気です。診断には、血液検査や尿検査を中心に、複数の項目を総合的に評価します。
主な検査項目
血糖値の測定
空腹時血糖(126mg/dL以上)や随時血糖(200mg/dL以上)と高いなど、糖尿病型の所見を示すことが診断の出発点となります。
HbA1c(ヘモグロビンA1c)
過去1~2か月間の平均血糖値を反映しています。6.0%以上で耐糖能の異常が疑われます。貧血などがあると、平均血糖値と乖離した値になることもあります。
尿検査
尿中の糖やケトン体の有無を調べ、ケトアシドーシスの兆候がないかを確認します。
自己抗体検査
1型糖尿病の特徴である自己免疫反応の存在を調べます。GAD抗体、IA-2抗体、ZnT8抗体などの自己抗体が検出されることがあります。
これらの抗体が陽性であれば、自己免疫性の1型糖尿病の可能性が高いと考えられます。
インスリン分泌能の評価(Cペプチド測定など)
血液や尿で、インスリンがどの程度分泌されているかを調べます。1型糖尿病では、インスリン分泌が低下または消失しているのが特徴です。
進行タイプの見極めも重要
1型糖尿病には、「劇症型」「急性発症型」「緩徐進行型」などのタイプがあり、診断時の経過や検査所見から病型を見極めることが、治療方針を決める上でも重要です。
早期に正しく診断することで、重症化や合併症を防ぐことが可能です。のどの渇きや急な体重減少、倦怠感などの症状がある方は、早めの受診をおすすめします。
1型糖尿病の治療方法
インスリン療法

1型糖尿病は、体内でインスリンがほとんど作られなくなることが原因で起こるため、インスリン療法は必須の治療です。
インスリン治療の基本的な考え方は、健康な人のインスリン分泌のパターンにできるだけ近づけるように補充し、血糖値をコントロールすることです。
インスリン分泌には以下の2つのパターンがあります。
- 基礎分泌:一日を通して常に少量でるインスリン分泌パターン
- 追加分泌:食事をとった後に急峻かつ大量にでるインスリン分泌パターン
治療では、血糖値の測定結果、食事内容、運動量などに応じてインスリン量を調整します。医師をはじめとする医療スタッフと相談しながら、自分に合ったインスリンの使い方を身につけていきます。
インスリン投与方法
① 頻回皮下注射療法(強化インスリン療法)
多くの患者さんが行っている基本的な治療法です。
一般的にはペン型注射器を使用し、基礎インスリンを1日1~2回、毎食前に追加インスリンとして超速効型または速効型インスリン製剤を注射します。
食事量・運動量・血糖値に応じて注射量(単位)を調節します。
② インスリンポンプ療法(CSII)
インスリンポンプを用いて、24時間持続的に皮下へ微量のインスリンを注入する方法です。
頻回注射でも血糖コントロールが難しい場合や、重症低血糖が頻発する方、妊娠希望または妊娠中の方など、より厳格な血糖管理が必要なケースでよく使用されます。
精密なインスリン調節(0.05~0.1単位)で、より生理的なインスリン補充が可能です。
生活の自由度が高まり、夜間や暁現象といわれる早朝の血糖変動の改善も期待されます。
なお、インスリンポンプ療法にはこまめな血糖モニタリングと自己管理能力が必要です。費用やトラブル時の対応についても理解しておくことが重要です。
また、近年は24時間血糖を測りながらインスリンポンプが連携し、基礎インスリン量を自動調節してくれるものもあります。
一方で、自己血糖測定の頻回な実施や機器トラブルへの対応(例:一時的な注射への切り替え)が必要です。費用面の負担も検討課題となります。
インスリン製剤の種類
インスリン製剤は作用発現時間、作用持続時間の違いにより、次の6種類に分類されます。
- 超速効型インスリン製剤
- 速効型インスリン製剤
- 中間型インスリン製剤
- 持効型溶解インスリン
- 混合型インスリン製剤
- 配合溶解型インスリン製剤
それぞれの製剤を病状やライフスタイルに応じて組み合わせ、より安定した血糖コントロールを目指します。
食事療法・運動療法
1型糖尿病でも食事療法と運動療法は基本の治療です。
食事療法

1型糖尿病の方も、健康な体を維持するための適切な食事が基本です。
「食事制限」ではなく、”栄養バランスを考えた「食事療法」”として、以下のポイントを意識します。
- 糖質・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラルをバランスよく
- 食物繊維をしっかり取り、油や食塩の量を減らす工夫を
- 特に小児・思春期では成長に合わせた食事設計が重要
- 食べ過ぎはインスリン量の増加や肥満・脂質異常のリスク
- 食べる量・内容に応じたインスリン調整が必要
血糖値を上げにくくする食べ方のコツや外食が多い方のメニュー選びなど、管理栄養士のサポートも受けながら、無理なく続けられる食事計画を立てていきましょう。
運動療法

1型糖尿病においても、運動は血糖コントロールと健康維持に有効です。
- 運動によりインスリンの効きが良くなり、血管合併症の予防にもつながる
- ウォーキング、体操などの軽~中等度の運動から始めましょう
- 激しい運動は血糖値の急激な変動を引き起こすこともあり、注意が必要です
- 運動前のインスリン量の調整や補食で低血糖予防を
特にマラソンや登山など長時間・高強度の運動を行う場合には、夜間の低血糖にも注意が必要です。
運動時の血糖管理については、主治医・看護師・管理栄養士と相談して計画を立てましょう。
1型糖尿病についてのよくある質問
1型糖尿病についてよくある質問をまとめました。
1型糖尿病について気になる点がありましたら、
こちらの内容をご確認ください
- 1型糖尿病でも食事制限は必要ですか?
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特別な「制限」は必要ありませんが、「栄養バランスのとれた食事」が大切です。
1型糖尿病では、年齢・性別・活動量に応じて、必要な栄養を過不足なくとることが基本です。健康な人と同じように、規則正しくバランスの良い食事を心がけましょう。たべる量や内容に応じてインスリンを調整することも大切です。
ただし、お菓子の食べ過ぎや偏った食生活、肥満がある場合には、血糖管理を難しくするため、主治医や管理栄養士と相談しながら、食事療法として適切な食物の選び方や量を工夫していきましょう。
- 1型糖尿病はどの年代に多いですか?
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発症のピークは10〜13歳ごろですが、あらゆる年代で起こりえます。
小児期や思春期に発症することが多いですが、乳児から高齢者までどの年齢でも発症する可能性があります。70歳代や80歳代で発症する方も報告されています。
- 1型糖尿病の合併症にはどのような病気がありますか?
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慢性合併症(長期間の高血糖による)
– 細い血管に影響する:神経障害、網膜症、腎症
– 太い血管に影響する:心筋梗塞、脳梗塞、下肢の動脈硬化
– その他:歯周病や感染症のリスクも上がります急性合併症(インスリン不足による)
– 代表例は糖尿病ケトアシドーシスです。ケトアシドーシスを引き起こす誘因として、インスリンの自己中断、風邪や胃腸炎などで十分に水分や食事が摂取できなくなり(シックデイといいます)発症することがあります。
意識障害や昏睡を引き起こすこともあり、十分に注意しなければならない合併症です。血糖の管理を良好にコントロールすることで、これらの合併症は予防可能です。
- 子どもが1型糖尿病ですが、運動しても大丈夫ですか?
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小児・思春期には体力の向上や生活リズムの確立、運動習慣の形成、さらには血糖の安定にもつながります。ただし、低血糖のリスクがあるため、運動前後の血糖測定や補食、インスリン量の調整が必要です。
チャレンジする気持ちを大切にしながら、主治医や医療スタッフと相談しながら、ご自分に合った運動習慣と血糖管理する方法を身につけていきましょう。
- 日常生活で気をつけることはありますか?
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インスリンを適切に使えば、普段通りの生活が可能です。
仕事や学校、旅行、外食など、インスリン療法を正しく行えば、多くの活動を制限なく行うことができます。
ただし、”インスリン療法を正しく行う” ということは、実際には難しいと思うことが多いと思います。血糖の急激な変動(高血糖・低血糖)には注意が必要です。規則正しい生活、十分な睡眠、ストレスの管理が血糖の安定につながります。
低血糖への備えとして、ブドウ糖や補食を常備しておくと安心です。
わからないことや困ったことがあれば、一人で悩まず、医師や医療スタッフに相談してください。
- 1型糖尿病でも妊娠・出産は可能ですか?
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血糖値が良好にコントロールされていれば、妊娠・出産は可能です。
赤ちゃんの先天性の病気や巨大児、お母さんの流産・早産や妊娠高血圧症候群など糖尿病による体への影響を防ぐためには、妊娠する前からしっかりと治療や血糖の管理を行うことが大切です。これを「計画妊娠」と言います。
妊娠中はホルモンの影響で血糖が変動しやすくなるため、インスリンの調整や頻回の血糖測定が必要になります。
経験のある糖尿病専門医・産婦人科医・管理栄養士など医療チームと連携して、安心して出産の日を迎えられるように準備していきましょう。
- 1型糖尿病は治りますか?
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現時点では、1型糖尿病を完治させる根本的な治療法は確立されていませんが、適切な管理で健康な生活が可能です。
インスリンが体内で作られなくなることが原因のため、現在はインスリン療法を一生続ける必要があります。
血糖コントロールが良好であれば、合併症のリスクを抑え、健康な人と変わらない生活を送ることができます。
- 学校や職場に1型糖尿病を伝えるべきですか?
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安心して過ごすために、信頼できる人に伝えておくのがおすすめです。
低血糖時の対応などを考えると、担任の先生や職場の上司、保健室や産業医などに情報を共有しておくことで、万が一の際に適切なサポートを受けやすくなります。
伝える範囲や内容は、ご本人の希望に合わせて調整できます。
- お酒や外食はしても大丈夫ですか?
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外食や飲酒も、インスリンの調整と血糖測定をしっかり行えば楽しめます。
ただし、お食事をあまりとらずに、お酒だけ飲んだりすると低血糖になることがあります。特に空腹でのお酒は低血糖を引き起こしやすく、注意が必要です。
外食では炭水化物量の把握や食べる順番、食後の運動などで工夫ができます。
- 旅行や出張のときはどうすればいいですか?
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事前の準備と持ち物チェックで、安心して出かけられます。
旅行や長時間の外出の際は、以下の点を意識しましょう:
– インスリン、針、補食、血糖測定器、ブドウ糖などを多めに準備
– 保冷剤やインスリンケースの使用
– 時差のある地域では、主治医と相談の上、インスリンのタイミングを調整
– 移動中も規則正しい食事とインスリン補充を心がけることで、普段通りの生活ができます。
- 感染症にかかると血糖が上がるのはなぜですか?
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体がストレス状態になると、血糖を上げるホルモンが出るためです。
風邪やインフルエンザ、胃腸炎などにかかると、体は回復のためにコルチゾールやアドレナリンといった“血糖を上げるホルモン”を分泌します。
そのため、食事をとれない状態でも血糖が高くなったり、ケトアシドーシスのリスクが高まることがあります(=シックデイ)。
体調不良時は、食事・水分・インスリンをどう調整するかをあらかじめ医師と相談しておくと安心です。
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休診日:木曜、土曜午後、日曜祝日注意事項
- 待ち時間の短縮のため、受診される際は可能な限り事前のご予約をお願いいたします。
- 1型糖尿病でインスリンポンプ治療中の方は、お電話でご予約をお願いいたします。
こちらで手続きにお時間を要することがありますので、診察の1週間程度前までにご連絡をお願いいたします。