「知ってますか?DASH食」~アメリカ発!高血圧を防ぐ食事方法~
- 2021.02.12
- 生活習慣病
DASH=Dietary Approaches to Stop Hypertension(高血圧を防ぐ食事方法)の略語で、アメリカで行われた調査・研究からまとめられた血圧の改善に高い効果がある食事のことです。
DASH食には2つのポイントがあります。
①脂肪の多い肉類や砂糖を含む甘いものを減らす
具体的には肉類から魚類に切り替えて不飽和脂肪酸を増やし、低脂肪の肉と低脂肪乳製品をとることにより飽和脂肪酸・コレステロールなどの脂肪摂取を減らすことです。肉類は脂肪の少ない鶏肉などを選び、調理方法も皮や脂を取り除き、ゆでたり、焼いたりする。低脂肪の牛乳やヨーグルトなどでカルシウムが不足しないように意識して補うとよいでしょう。甘いお菓子やジュース類なども減らしましょう。
②野菜や海藻、果物、ナッツ類、全粒穀物を十分にとる
塩(ナトリウム)を排出する働きのあるカリウムをはじめ、カルシウム、マグネシウムのミネラルを多く含む果物、食物繊維を多くとることで血圧を下げる効果が期待できます。これらのミネラルにはそれぞれに異なった血圧を下げるはたらきがあります。
野菜を毎食とり、ミネラルが効率よくとれる大豆製品、乳製品、バナナ、アボカド、ブロッコリー、ナッツ類、いわし、しらすなどを積極的に摂取しましょう。
血圧を下げる働きがあるといわれている食品を一つだけではなく、様々な食品を”組み合わせる”ことでより効率的に血圧を下げると考えられています。
アメリカと日本では体質や食文化の違いはありますが、血圧によい食事には共通した面が多くあり、DASH食は日本人への有効性を感じられます。
日本人に合わせた高血圧の食事療法
食塩摂取量が多い日本人にとっては、DASH食+減塩の組合せが効果的だと思います。
高血圧症の食事で大切なことは、減塩を中心に、適正なエネルギー量を摂取して肥満にならないように注意し、野菜をたっぷり食べ、アルコールは控え、運動を積極的にするといった相互作用から成り立っており、どれも継続していくことが大切な事ばかりです。
その中でも、最も注目すべきはやはり減塩ではないでしょうか。
減塩が長続き出来れば、それはもう減塩ではなく日常のあたりまえの味になります。
では、減塩を長続きさせるコツは何なのでしょうか?
明確な目的をもち、常に減塩を意識続ける強い気持ちがないと難しいかもしれません。
しかし、減塩ばかりに気をとられ、食事を楽しく美味しく味わうという本来の目的を失っては減塩生活を続けられないのではないでしょうか。まずは、自分なりに無理なく続けられることから始めてみましょう。
好きな料理1品だけは減塩を意識し過ぎず今まで通りに食べ、その分その他の料理でしっかり減塩するということでも良いかもしれません。何か1つの食材でも、何か1品の料理でも薄味になれたら、自然に舌が薄味に慣れてきて、徐々に他にも薄味になり、それが全体的な減塩生活に広がっていくようになると思います。食事は毎日のことですから、繊細な味も敏感に感じられるような舌に育てていくのも良いかもしれません。
もちろん、血圧が高くないから塩味に気をつけなくても大丈夫などとは考えず、将来血圧が正常でいるためにも、減塩の習慣を今からすぐにでも実施していくことが大切です。毎日の何気ない小さな積み重ねが、明日の、未来の自分を助け守ってくれます。日々の食事や生活習慣を見直して、上手に血圧をコントロールしていきましょう。
「日本の食に活かそう!DASH食」
単独の栄養素では血圧低下の効果が弱くても、複数の栄養素を組合せて摂取することで大きな血圧低下効果が期待できるDASH食。
日本高血圧治療ガイドライン2019が推奨する項目とあわせて、日本人にあった、日本の食事に活かしたDASH食を考えてみましょう。
~日本高血圧治療ガイドライン2019~
①食塩制限(食塩6g/日未満)、②野菜・果物の積極的摂取、コレステロールや飽和脂肪酸の摂取制限、③適正体重の維持、④運動の習慣、⑤節酒、⑥禁煙の6項目が推奨。
日本人をとりまく四季折々の食材、海の幸、山の幸、里の幸の美味しさを日本風土にあうよう、各地域の特性をいかした様々な調味や調理方法で作る料理が我ら日本人の味『和食』です。2013年にはユネスコ無形文化遺産に登録されました。栄養バランスが優れていてヘルシーな食事と評される一方で、食塩の摂取が多いという問題点があり、先進国のなかでは食塩摂取量が多い国とも知られています。
高血圧の食事療法に有効といわれる、DASH食を活かしつつ、減塩もできる私たち日本人により適した食事療法を考えてみましょう。
パン食の献立の場合
主食となるパンは食物繊維の多い”ライ麦パン”や”全粒粉パン”で食物繊維とミネラルを摂取
Point!パンには何も塗らないのが良いが、塗りたい場合は植物油がおすすめ
主菜となるおかずは「卵」を使ってシンプル料理
Point!ゆで卵ならベスト。他の卵料理をするなら、調理に使うバターや油、味付けを控えるのがポイント
副菜は新鮮な緑黄色野菜たっぷりのサラダ
Point!トッピングにナッツや海藻、茹で大豆を加えたらさらに栄養価がアップに
ゆで卵だけではたんぱく質が不足するので、低脂肪の無糖ヨーグルトを新鮮フルーツと共に
ご飯食の献立の場合
主食となるご飯は、雑穀米や玄米で食物繊維やミネラルを摂取
Point!ご飯のおともになる漬物や佃煮は塩分過多なので摂取は控える
主菜となるおかずは青魚(イワシ・鯖・アジなど)を選んで、不飽和脂肪酸を摂取
Point!干物よりは生を利用。時には青魚の缶詰なども利用して缶汁も無駄なく使用
副菜は緑黄色野菜(ほうれん草・小松菜など)の胡麻和えやしらす干しの小魚をのせたおひたしなどで。
Point!胡麻やナッツの風味、小魚やかつお節などの持つ塩味を十分に活かして調味の塩分量を控えると同時にミネラル分を補給
豆腐や海藻、イモ類や野菜をたっぷり入れた味噌汁
Point!具沢山にすることで汁の塩分を減らし、水に溶けだすカリウムを無駄なく摂取
DASH食は、動物性の飽和脂肪酸やコレステロールの多い食品を控えるようにすすめていること、さらに、野菜の摂取も多くなるため、高血圧症だけではなく肥満の改善にもつながりそうです。しかし、肉類を減らすことや野菜を増やすことに意識し過ぎて、たんぱく質不足にならないように気をつけましょう。
海外から伝わった食材や料理を日本の食習慣にあうように工夫し、独自に変化することが出来る柔軟性があるのも日本人の特徴です。いろいろな食材や味、調理方法にチャレンジすることで新たな味の発見がありそうです。美味しく食べられることに感謝して、笑顔で健康になりましょう!
当クリニックでは、管理栄養士が医師の指示に基づいて、個別の疾患や生活スタイルにあわせた「栄養指導」を行っています。食事を楽しく美味しく味わうことは喜びでもあります。自分なりに無理なく続けることができ、より効果的な方法を具体的にわかりやすくお話することを心がけています。血圧に不安をお持ちのかたは、ぜひご相談ください。
当クリニックの栄養指導についてはこちらを御覧ください
参考資料
※日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」
※厚生労働省e-ヘルスネット高血圧
※日本人の食事摂取基準2020年版
※検査値に基づいた栄養指導新改訂版
※新セミナー生活習慣病
※日経Gooday「高血圧」改善で、健康寿命を延ばす
※佐々木敏のデータ栄養学のすすめ
※佐々木敏の栄養データはこう読む!第2版