管理栄養士が教える!骨粗鬆症の食事で気を付けるべきポイント
- 2020.10.09
- 骨粗鬆症
骨の健康のためには「カルシウム」が最も重要な栄養素ですが、体内に吸収されにくいため、カルシウムを効率よく摂取するための吸収を助ける栄養素が必要になります。
それは、カルシウムの吸収を促進する”ビタミンD”、骨へのカルシウムの取り込みを助ける”ビタミンK”、骨のコラーゲンの劣化を防ぎ『骨質』良くするのに有効な”ビタミンB6、ビタミン12、葉酸”等の栄養素で、これらを十分に摂取することが大切です。
さらに、たんぱく質の摂取量が不足することで骨密度の低下を助長しますので、欠食や偏った食生活にならないよう、1日3食、栄養バランスをととのえることも大切です。
また反対に、カルシウムの吸収を妨げる食品についても十分に理解しておきましょう。
骨粗鬆症の食事のポイント~積極的に食べてほしい栄養素~
①カルシウム
骨の主成分はカルシウムであり、骨の強度を保つ上で欠かせない成分です。体内のカルシウムは99%が骨と歯に含まれ、残りの1%は血液などに含まれています。
血液中のカルシウム濃度は一定に保たれているため、カルシウムが不足すると骨からのカルシウムが使われてしまい、骨が弱くなってしまいます。そのため、不足分は食べ物から補う必要があります。しかし、カルシウムの体内での吸収率は良くないため、毎食意識してカルシウムを多く含む食品を食べる必要があります。
*18歳以上の女性1日におけるカルシウムの必要量は550㎎、推奨量は650㎎
(75歳以上は、必要量500㎎、推奨量600㎎)
*30歳以上の男性1日におけるカルシウムの必要量は600㎎、推奨量は750㎎
(75歳以上は、必要量600㎎、推奨量700㎎)
★骨粗しょう症予防のための推奨量は、1日700~800mgです。
カルシウムを多く含む食品
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食品群別 |
乳製品 |
魚介類 |
大豆製品 |
野菜・海藻類・種実類 |
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特徴 |
*良質の動物性たんぱく質が豊富で、吸収率が高い |
*乳製品に比べて吸収率は低めだが、身近な馴染みのある食材が多い |
*良質な植物性たんぱく質が豊富だが、吸収率は低め |
*吸収率は低いが、ビタミンCやビタミンKにより吸収を高める効果あり |
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食材:1食あたりの目安量 ★骨粗しょう症 |
低脂肪乳 |
200㎖:210g |
273㎎ |
わかさぎ |
8尾:80g |
360㎎ |
焼き豆腐 |
1/3丁・100g |
150㎎ |
茹でつるむらさき |
60g |
108㎎ |
牛乳 |
200㎖:210g |
231㎎ |
ちりめんじゃこ |
大さじ3・15g |
330㎎ |
厚揚げ |
1/3枚・60g |
144㎎ |
茹で小松菜 |
70g |
105㎎ |
|
スキムミルク |
大さじ3・20g |
220㎎ |
鮭缶水煮 |
1/2缶・90g |
306㎎ |
木綿豆腐 |
1/2丁・150g |
140㎎ |
水菜 |
50g |
105㎎ |
|
アイスクリーム |
100g |
140㎎ |
鯖缶水煮 |
1/2缶・95g |
247㎎ |
がんもどき |
中1個・100g |
135㎎ |
茹でモロヘイヤ |
60g |
102㎎ |
|
ゴーダチーズ |
20g |
136㎎ |
ししゃも |
3尾・60g |
216㎎ |
凍り豆腐乾燥 |
1枚・20g |
126㎎ |
茹で菜の花 |
70g |
98㎎ |
|
プロセスチーズ |
20g |
126㎎ |
干しエビ |
大さじ1/2・3g |
213㎎ |
納豆 |
1パック・50g |
45㎎ |
チンゲン菜 |
80g |
80㎎ |
|
ヨーグルト |
100g |
120㎎ |
ほっけ開き |
半身・100g |
180㎎ |
大根の葉 |
30g |
78㎎ |
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カマンベールチーズ |
20g |
92㎎ |
いわし丸干し |
1尾・40g |
176㎎ |
切干し大根乾燥 |
15g |
75㎎ |
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オイルサーディン |
1/2缶・50g |
175㎎ |
炒りごま |
大さじ1・6g |
72㎎ |
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うなぎ蒲焼 |
1串・100g |
150㎎ |
アーモンド |
25粒・25g |
65㎎ |
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桜エビ素干し |
大さじ2・5g |
100㎎ |
乾燥ヒジキ |
5g |
50㎎ |
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しらす干し微乾燥 |
30g |
63㎎ |
干しわかめ |
5g |
39㎎ |
②ビタミンD
ビタミンDは、腸管からのカルシウムの吸収を促進し、血液に入ったカルシウムを骨まで運ぶ働きがあります。カルシウムは吸収されにくい栄養素なので、ビタミンDとあわせて摂取することが大事です。また、骨を作る骨芽細胞の働きを促進して骨の形成を助けたり、筋力を高めたりする作用があります。
*ビタミンD食事摂取基準目安量:8.5μg/日(成人男女)
★骨粗しょう症予防のための推奨量は、1日10~20㎍です。
③ビタミンK
ビタミンKは、骨に存在するオステオカルシンというたんぱく質を活性化して、カルシウムが骨に取り込まれて骨の形成を促したり、カルシウムが尿中に排泄されるのを抑え、骨の破壊を防ぎます。
*ビタミンK食事摂取基準目安量:150μg/日(成人男女)
★骨粗しょう症予防のための推奨量は、1日250~300㎍です。
カルシウムの吸収を助ける栄養素
~脂溶性ビタミンのビタミンDとビタミンKはあぶらと一緒に食べて吸収アップ~
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|
魚類 |
肉類 |
きのこ類 |
野菜類 |
その他 |
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ビタミンDを *摂取目安量 ★骨粗しょう症予防推奨量 |
アンコウ肝 |
60g |
66㎍ |
舞茸 |
1/2袋弱・45g |
2.2㎍ |
全卵 |
1個・50g |
0.9㎍ |
||||||||||
まいわし |
1尾・100g |
32㎍ |
干しシイタケ |
大2個・8g |
1㎍ |
うずら卵 |
3個・30g |
0.8㎍ |
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鮭 |
1切れ80g |
25.6㎍ |
きくらげ |
大2個・1g |
0.9㎍ |
普通牛乳 |
200㎖・210g |
0.6㎍ |
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マイワシ |
1尾・40g |
20㎍ |
エリンギ |
中1本・45g |
0.5㎍ |
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うなぎ蒲焼 |
1串・100g |
19㎍ |
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さんま |
1尾・100g |
15.7㎍ |
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しまあじ |
1尾・80g |
14.4㎍ |
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しらす干し微乾燥 |
30g |
13.8㎍ |
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まがれい |
1切れ・100g |
13㎍ |
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イサキ |
刺身7切れ・85g |
12.8㎍ |
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まかじき |
1切れ・100g |
12㎍ |
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ビタミンKを *摂取目安量 ★骨粗しょう症予防推奨量 |
鶏もも肉 |
1/2枚・120g |
74㎍ |
茹で |
60g |
270㎍ |
納豆 |
1パック・50g |
300㎍ |
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鶏むね肉 |
100g |
50㎍ |
茹で春菊 |
50g |
230㎍ |
がんもどき |
中1個・100g |
43㎍ |
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鶏手羽元皮・骨付き |
2本・110g |
43㎍ |
茹で小松菜 |
70g |
224㎍ |
油揚げ |
1/2枚・30g |
20㎍ |
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鶏はつ |
2本串・75g |
38㎍ |
茹でほうれん草 |
70g |
224㎍ |
厚揚げ |
1/3枚・60g |
15㎍ |
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茹でつるむらさき |
60g |
210㎍ |
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茹で菜の花 |
70g |
175㎍ |
昆布佃煮 |
大さじ1・12g |
37㎍ |
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茹でブロッコリー |
60g |
90㎍ |
干しわかめ |
5g |
33㎍ |
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茹で豆苗 |
40g |
84㎍ |
乾燥ヒジキ |
5g |
29㎍ |
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ニラ |
30g |
54㎍ |
とろろ昆布 |
大さじ1・10g |
15㎍ |
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キャベツ |
1枚50g |
39㎍ |
④マグネシウム
マグネシウムは骨を形成する骨芽細胞に働きかけ、骨の中に入るカルシウム量を調節するため、不足をしてしまうとカルシウムが骨の形成に役立つことが出来なくなります。
骨密度の増加や骨折予防の効果が大きく、カルシウム2対マグネシウム 1 の割合でバランス良くとる必要があります。
⑤良質なたんぱく質とビタミンB6、B12、葉酸
骨を強くするにはカルシウムで骨量を増やす(骨密度)だけではなく、「骨質」も大切です。
この骨質はコラーゲンによって強化されます。
ビタミンB6、B12、葉酸は骨のコラーゲンの劣化を防ぎ、コラーゲン形成に重要とされています。骨の質を高めるコラーゲンの材料となるのがたんぱく質です。
たんぱく質は筋肉を作るためにも欠かせない栄養素であり、骨折を防ぐには筋肉もしっかりしている必要があります。
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|
魚介類・海藻類 |
肉類 |
野菜類・果物類 |
穀類・豆類・種実類 |
卵・乳 |
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ビタミンB6を |
まぐろ赤身刺身 |
4切れ・80g |
0.86㎎ |
鶏むね |
100g |
064㎎ |
バナナ |
1本・200g |
0.76㎎ |
玄米ご飯 |
茶碗1杯・150g |
0.32㎎ |
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カツオ刺身 |
5切れ・100g |
0.76㎎ |
豚ヒレ |
100g |
0.54㎎ |
アボカド |
1/2個・100g |
0.32㎎ |
ひきわり |
1パック・50g |
0.15㎎ |
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ごま鯖 |
1切れ・100g |
0.65㎎ |
牛レバー |
60g |
0.53㎎ |
さつまいも |
1/2本・150g |
0.30㎎ |
炒り |
7粒・20g |
0.10㎎ |
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鮭 |
1切れ・80g |
0.51㎎ |
鶏ささみ |
80g |
0.53㎎ |
赤ピーマン |
1/2個・75g |
0.28㎎ |
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まいわし |
1尾・100g |
0.49㎎ |
鶏レバー |
60g |
0.39㎎ |
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はまち刺身 |
3切れ・50g |
0.27㎎ |
豚レバー |
60g |
0.34㎎ |
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ビタミンB12を 成人18歳以上 |
さんま |
1尾・150g |
24.3㎍ |
牛レバー |
60g |
31.7㎍ |
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牡蠣 |
むき身5個・ |
23.1㎍ |
鶏レバー |
60g |
26.6㎍ |
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しじみ殻付き |
20個100g⇒可食部25g |
17.1㎍ |
豚レバー |
60g |
15.1㎍ |
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はまぐり |
大3個⇒ |
17.0㎍ |
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アサリ殻付き |
1カップ70g⇒可食部30g |
15.7㎍ |
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さば |
1切れ100g |
12.9㎍ |
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いわし蒲焼缶詰 |
1缶100g |
12.0㎍ |
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葉酸を 成人18歳以上 |
うに |
二貫40g |
144㎍ |
鶏レバー |
60g |
780㎍ |
イチゴ |
10個・150g |
135㎍ |
納豆 |
1パック・50g |
60㎍ |
卵 |
1個・50g |
22㎍ |
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帆立貝 |
100g |
87㎍ |
牛レバー |
60g |
600㎍ |
茹で菜の花 |
70g |
133㎍ |
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焼き海苔 |
1枚3g |
57㎍ |
豚レバー |
60g |
486㎍ |
茹で枝豆 |
さやつき100g⇒可食部50g |
130㎍ |
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乾燥わかめ |
5g |
22㎍ |
春菊 |
50g |
95㎍ |
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アスパラガス |
2本50g |
95㎍ |
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茹で |
70g |
77㎍ |
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茹で |
60g |
72㎍ |
骨粗鬆症の食事のポイント~骨に悪い、過剰摂取を避けた方が良い食品~
下記に上げる食品類は、カルシウムの吸収を阻害するため、過剰に摂取することは控えましょう。
①カルシウムの吸収を妨げる食品
- リン・・・インスタント食品・スナック菓子・加工食品など
- アルコール
- カフェイン
②カルシウムの尿への排泄を促進する
- 食塩
骨を強くするおすすめの調理法
おなじものをたべるのでも、ちょっとした調理法によって骨密度を上げ、骨を強くしてくれます。
①魚料理
魚料理をするときは、酢を使うとカルシウムの吸収率もアップします。
また、骨まで軟らかくなり食べやすくなり、一石二鳥です。
②きのこ類の調理
干ししいたけなどきのこ類は、調理前に2~3時間日光に当てると、ビタミンDを豊富に含むようになります。
ビタミンDはカルシウムの吸収を助けるだけでなく、免疫効果を高める効果もあります。
骨粗鬆症になったら
骨密度は加齢とともに減少します。
適切な食事をこころがけるとともに、日々の生活に運動や日光浴を取り入れて、丈夫な骨を作り維持するようにしたいですね。
それでももし骨粗鬆症になってしまったら、当院にご相談ください。