高血圧は万病のもと!高血圧症のための食事のポイント
- 2021.02.10
- 生活習慣病
健康診断で、数値が高くても低くても気になるのが”血圧”の項目ではないでしょうか。健康診断の結果を受けて、高血圧の治し方や改善方法について調べている人もいるかもしれません。
数値が高いと「高血圧」になりますが、日本人のおよそ3人に1人が高血圧といわれ、有病率が最も高い国民病といえる疾患です。
最近は、20~30代の若年層の高血圧も増えてきているため、まだ若いから大丈夫と侮ってはいけません。
自覚症状がほとんどないために、高血圧をそのまま放置していると、脳や心臓、腎臓、血管など各臓器へ負担をかけ、脳卒中や心疾患のリスクが高まる万病のもととなります。
高血圧は、喫煙と並んで、日本人の死亡に最も大きく影響する要因ともいわれ、もし高血圧が完全に予防できれば、亡くなる方が年間10万人以上減ると推計されています。
血圧が高ければ、食塩を減らした食事にすればいい、すなわち高血圧=食塩制限とイメージされる方がほとんどではないでしょうか。実は、食塩を制限するだけの食事改善をしても、血圧が下がらないことがあります。
では、どのような点に注意をしたら良いのでしょうか。
ここでは、「高血圧の治し方や改善方法が知りたい」という方に、高血圧症の方のための食事のポイントをお伝えします。
その前に、食習慣・生活習慣で高血圧になるリスクをチェック!!
現状を正しく理解しましょう。
高血圧のリスクが高い食習慣・生活習慣
- 漬物・汁物・干物・加工品などの食べる頻度が多い
- 肉食が中心で、魚(特に青魚)を食べることが少ない
- 野菜・海藻・きのこ類はあまり食べない
- 甘い飲み物・甘いお菓子は欠かさず食べている
- タバコを吸う
- アルコールを飲むことが多い
- 朝食は食べない
- 運動は全くしない
- 外食の頻度が多い
ひとつでもあてはまるものがあれば要注意!
あてはまるものがなくても、将来血圧が正常でいるために今からすぐにでも食習慣・生活習慣を見直して予防をしていきましょう。
高血圧=食塩制限だけじゃない?何を食べたらいい?どう食べたらいい?
食事の中で減らすのはこれだけ!!
①やっぱりまずはこれから~塩(食塩量)~
*目標とする1日の食塩摂取量は?
食塩の過剰摂取が高血圧と関連性があることは皆さんご存知の通り。
長い間、日本人の食塩摂取基準の目標量は成人1日あたり10g未満とされてきましたが、2005年に女性だけ8g未満に引き下げられ、2015年からは男性8g未満、女性7g未満となり、2020年の4月からは、男性7.5g未満、女性6.5g未満となりました。
日本高血圧学会による「高血圧治療ガイドライン2019」では、高血圧者の減塩目標を食塩6g/日未満としています。世界に目をむけてみると、世界保健機関(WHO)では、世界中の人々の食塩摂取目標量を1日5gとしています。ちなみに、アメリカは6g未満とされているそうです。
日本だけではなく全世界で食塩摂取に対する注目が集まっています。
ご参考までに、日本人の食塩摂取基準の必要量は1.5gとなっています。私たちの体になくてはならない食塩の量はたった1.5gということになります。
もう一つご参考までに、食塩摂取量を1g/日減らすと、収縮期血圧が約1㎜Hg強の降圧が期待できるといわれています。
自分が今食べている食塩の量は一体どれくらいなのか気になってきましたね。
まずは、1日6g未満を目標に、1日1食だけでも塩分を減らす食べ方をスタートしてはいかがでしょうか。
*食塩と血圧の関係
食品の保存方法の1つに”塩で漬ける=塩蔵”があります。野菜、大豆、魚、肉などあらゆるものを塩で漬けることにより保存性を高めることができるようにした人間の知恵です。
これは、塩そのものに殺菌効果があるからではなく、塩の浸透脱水作用で食品中の水分をぬくことにより、食品の腐敗をおこす微生物の働きを抑制する作用を利用しています。
ポイントは『水』です。
では、血管内に過剰な塩分が入ってきた場合を考えてみましょう。
血液中の塩分濃度は0.9%に保たれています。血液中の塩分濃度が高くなると、前述の通り、食塩は水分を引き寄せる性質がありますから、通常の濃度に薄めようとするために体内にある水分が血管に移行し血液量が増加します。食塩を摂り過ぎると喉が渇くのはそのためです。
この増加した血液を体中に循環させるため、心臓はより強い力で血液を送り出すことになりますから、血管壁にかかる負担が大きくなり血圧が上昇するのです。
②これも減らそう~コレステロールと飽和脂肪酸~
高血圧で食塩を減らすのは理解できますが、なぜコレステロールと飽和脂肪酸といった脂質も減らさなくてはいけないのでしょうか。
食塩と血圧の関係でお話ししましたが、血管に圧がかかり血管壁が張り詰めた状態になると柔軟性・弾力性が失われ、高い圧に負けないように壁が厚くなって硬く細く、傷みやすくなってしまいます。傷んだところにコレステロールなどの脂質がたまると血管がますます細くなり血液の流れが悪くなってしまいます。いわゆる動脈硬化です。
また、血液自体がコレステロールや中性脂肪の脂が多いドロドロの血液な場合、高い圧力をかけないと流れにくくなるというわけです。
高血圧は動脈硬化を進行させ、動脈硬化は高血圧を悪化させるともいわれています。
ですから、飽和脂肪酸の多い動物性脂肪・脂身の多い肉類・加工肉、コレステロールの多い魚卵・レバーの摂取は控え、魚の油、植物油を積極的に摂取するように心がけましょう。
特に、魚の青魚(イワシ、サバ、サンマなど)に多く含まれるn-3系脂肪酸(オメガ3)のDHA(ドコサヘキサエン酸)には血管の弾力性を高め、EPA(エイコサペンタエン酸)には血流を良くする効果があり、血圧を下げる作用がありますので積極的にとりましょう。
食事や飲み物で摂取したいのはこれ!
①3大ミネラル『カリウム』『カルシウム』『マグネシウム』
*カリウム
血中のナトリウムを尿中に排泄させ、血圧を下げる効果あり。
カリウムは水溶性で水に溶けだしてしまうため食べ方に注意。
生(水に浸したままにせず手早く調理)、炒める、蒸す、煮る場合は煮汁ごと食べられるようスープや汁物にして効率よく摂取。
おススメ食材⇒緑黄色野菜、根菜類、イモ類、海藻、豆類、きのこ、果物
注意1)果物は果糖が多く食べすぎは注意
注意2)腎機能が低下しカリウム制限がある場合は食べ方に注意
*カルシウム
不足すると血管を収縮させては血圧をあげる要因に。塩分を多くとるとカルシウムが体外へ排出され、カルシウム不足に陥るので注意。
おススメ食材⇒低脂肪の乳製品、骨ごと食べられる小魚、豆腐や納豆などの大豆製品、緑黄色野菜、海藻
*マグネシウム
血管を広げて血圧を下げる働きあり。
おススメ食材⇒海藻類、魚介類、穀類(胚芽米や胚芽パンなど精白米度の低い穀物)、緑黄色野菜、豆類・大豆製品、イモ類、ナッツ類
②食物繊維
人の消化酵素では消化することができない食物繊維は、腸内の余分な糖質や脂質を体外に排泄する作用があるだけではなく、腸内にあるナトリウム(食塩)を包み込み、排泄を促すことにより血圧の上昇を抑制する作用もあります。
特に水溶性の食物繊維に効果がありますので、毎日の食事に積極的に取り入れていきましょう。
※食物繊維についての詳細は下記のページをご確認ください。
③良質のたんぱく質 おススメは大豆製品・青魚
良質のたんぱく質は血管の弾力を良くし、強く丈夫にしてくれる大切な栄養素です。
特に植物性のたんぱく質(納豆や豆腐などの大豆製品)には降圧作用があるともいわれ、また、納豆には血栓を溶かし血液をサラサラにする働きがあります。
もちろん、動物性のたんぱく質と植物性のたんぱく質を偏ることなく、できるだけ毎食異なる種類のものをバランス良く食べることが大切です。
動物性のたんぱく質なら、肉類の脂質はとり過ぎないように赤身の部位を選び、その分、質の良い魚の油が豊富にある魚種を選ぶようにしましょう。卵や乳製品(できれば低脂肪)も忘れずに。
植物性のたんぱく質なら、豆腐や豆乳などの大豆加工品だけに偏らず、納豆や大豆そのものの食物繊維を摂取できるような食品を選ぶことも大切です。
逆にたんぱく質を必要以上に多くとり過ぎていないか、自分の適量を摂取しましょう。
※たんぱく質についての詳細は次の記事をご確認ください。
高血圧の改善が期待される食事メニューのポイント
⑴血圧を下げるために減塩を目指す
6g/日 未満
⑵緑黄色野菜・海藻・きのこは毎食欠かさない
3大ミネラル『カリウム・カルシウム・マグネシウム』を毎食摂取
⑶脂質とるなら肉より魚
コレステロール・飽和脂肪酸の摂取を控え、魚(魚油)・植物油の積極的摂取
⑷食物繊維を上手に摂取
男性21g/日・女性18g/日(18歳から64歳)特に水溶性食物繊維を多めに摂取
⑸良質のたんぱく質を過不足なく
動物性のたんぱく質・植物性のたんぱく質を様々食品から過不足なく摂取
高血圧改善にはこれも重要!!~生活習慣の改善ポイント~
①肥満の解消(適正体重の維持)
肥満者は肥満ではない人と比べて、約2~3倍も多く高血圧症にかかるといわれています。
その理由として考えられるのは。
❶肥満の人は食べすぎることが多いため、それが食塩のとり過ぎにつながること
❷肥満になると過剰に分泌されたインスリンの作用により、腎臓でのNaの再吸収が進むことでNaが増加し、それを薄めるために血液量が増えてしまう
❸お腹にたまった脂肪細胞から様々な物質が分泌され血管の収縮がおこる
つまり、塩分が必要以上に体内にたまったり、必要以上に血管が収縮したりして、血圧があがってしまうことになるのです。
また、肥満の人は血液中の脂質が多く、いわゆる血液がドロドロとした状態であるため、血液を押し出すために心臓に大きな負担がかかり高血圧を引き起こすことにもなります。
自分に合った適正体重を維持できるよう、適正なエネルギー摂取を心がけましょう。
まずはご自分の適性体重を知りましょう。
※適正体重と適正エネルギー量については次の記事で詳しく説明していますので、あわせてチェックしてみてください。
②運動習慣
適度な運動をすることで、高血圧を改善する効果が得られるといわれています。
運動をすることにより、①運動で使われる筋肉に多くの酸素や栄養を運ぶために血管がひろがる、②血圧をあげようと働く交感神経の緊張が緩和される、③インスリンの働きがよくなる、など体内では様々な作用が活発になり、相乗的に血圧を下げる効果がみられることがわかっています。
“ややきつい”と感じる程度の早歩きのような有酸素運動などがおすすめです。できれば定期的に毎日30分以上行うことを目標に、継続することが大切です。
注意)運動においては心血管合併症がないことを確認し、かかりつけ医にご相談の上実施してください。
③アルコール
アルコールと血圧の関係はとても深く、常日頃からアルコールを飲んでいる人ほど高くなる傾向があり、さらに飲酒量が増えるほど血圧が高くなるといわれています。
アルコールを飲むと酵素によってアセトアルデヒドに変化し、これが血液中に増加すると、血管を拡げるため血圧は一時的に低下しますが、血圧維持のために交感神経が活性化し、心拍を高め血圧を上昇させることになります。
厚生労働省が推進する国民健康づくり運動「健康日本21」によると、「節度ある適度な飲酒量」は、1日平均純アルコールで約20g程度であるとされています。
日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」においては、高血圧者の飲酒は、エタノールで男性20〜30mL/日以下、女性10〜20mL/日以下にすべきであるとされています。
過度な飲酒を避けるのはもちろんのこと、自分の適量を少なめに見積もること、毎日続けて飲まない、飲む時間は短く、休肝日をつくるなど、アルコールとの上手な付き合い方を考えてみましょう。
アルコールの1日の適正量(純アルコール約20g)
ビール:500ml、日本酒:1合、焼酎(35%):1/2合、ワイン:グラス2杯、ウイスキー・ブランデー:ダブル1杯、缶酎ハイ(7%):350ml
④禁煙
喫煙は血圧を上げる作用があり、たばこを1本吸うと15分以上持続するといわれています。
これは、たばこに含まれる化学物質が体内に吸収されて血管の収縮が促されるからです。
また、慢性的な酸素欠乏状態になるため、体は血液を多く必要となり、血液量が増えれば前述の通りの仕組みで血圧が上昇することになります。
動脈硬化や狭心症、心筋梗塞のリスクも高まるため、高血圧症の方の喫煙は非常に危険といえます。
まとめ
以上、高血圧症の方の食事のポイントや、食事以外で気を付けたい生活習慣などについてご説明しました。高血圧症の食事で大切なことは、減塩を中心に、適正なエネルギー量を摂取して肥満にならないように注意し、野菜をたっぷり食べ、アルコールは控え、運動を積極的にするといった相互作用から成り立っており、どれも継続していくことが大切です。